多能工

トヨタに学ぶ多能工の導入

日本を代表する企業といえば、真っ先にあがるのがトヨタ自動車です。そして多能工の発祥こそ、このトヨタ自動車だったのはご存知でしょうか?

多能工はトヨタ自動車の発展に大きく寄与してきました。ではなぜトヨタ自動車は多能工を生み出したのでしょうか?どのような仕組みでトヨタ自動車は今日のような発展をとげたのでしょうか?

この記事ではトヨタ自動車の歴史を紐解き、多能工を導入することでどのように企業進化を遂げてきたかを解説します。

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この記事でわかること
  • 多能工が生まれた時代背景
  • トヨタ生産方式の強みと多能工との関わり
  • 現代社会における多能工を導入するメリット

多能工が生まれた時代背景

トヨタ自動車が多能工を導入した時代は1980年代に遡ります。それ以前の時代背景から紐解きます。

フォード式の生産体制が隆盛

それまでのアメリカのフォード社が開発した革新的な生産方式(以下、フォード式)は大量生産に特化していました。

一台ずつ完成させる静止式組立方式ではなく、分業システムによる組み立ての単純化とベルトコンベアによる移動式組立方式により、原料から部品製造、組み立てまで一貫して行うシステムで圧倒的な生産時間の短縮を実現しました。

日本の自動車メーカーもそれに習い、フォード式を取り入れていました。

石油危機の到来

1970年代の石油危機により米国の消費者が燃費の良い日本の小型車を求めるようになり日本から米国への自動車輸出が急増しました。その結果、日本車にシェアを奪われた米自動車大手の業績が相次ぎ悪化し、従業員の大量リストラという事態に追い込まれました。

米国での日本車排斥への高まる圧力を受けて日本政府と自動車業界は81年、対米自動車輸出台数を制限する「自主規制」を導入することになりました。

日本国内の生産工場の空洞化

自主規制を受け入れた日本車メーカーは一方で、米国での現地生産を加速させました。
その結果、生産拠点を海外に移したことで空洞と化した日本の製造工場では過剰な生産能力に対しリストラが行われ、競争力の劣る企業は倒産に追い込まれる事態になりました。

また1980年代に入ると車に求められる需要も変わってきました。

  • 大量生産・大量消費時代が終了、少量生産へ。
  • 車の複雑化により部品点数が増大。


これらの要因で従来のフォード式生産では対応することが困難になっていました。

トヨタ生産方式と多能工

「小品目・大量生産」から「多品目・少量生産」へのニーズの移り変わりにいち早く対応したメーカーがトヨタ自動車です。創業時から練り上げられた生産方式「トヨタ生産方式」と新しいニーズに対応するために技術を習得した組立工がマッチしたことで効率的な生産を実現し、国内メーカーの中で先んじて躍進しました。

そしてこの多品目・少量生産に特化した組立工こそ多能工です

トヨタ生産方式とは

トヨタ生産方式はトヨタが創業時から積み重ねてきた知識と技術の結晶です。

以下の2つの大原則からなります。

ジャスト・イン・タイム(JIT)

『必要な時に、必要なだけ』を実現するために考案されたのがジャスト・イン・タイムの考え方です。具体的には以下のような施作が行われました。

かんばん方式

部品を組み立てる後工程の人が必要な分の部品を棚から持っていき、持ち出した棚にかんばんを立てかけておく。前工程の人はかんばんで不足している部品の数を確認して必要分だけ部品を供給する。

巡回混載運搬

複数ある部品工場から組み立て工場への運搬を個別から巡回混載運搬に変更した。これにより1日1回だった部品納入(大量・一括)を1日4回(少量・複数)にしてより少ない在庫で生産できるようになった。

自働化

自動化とは一般的に機械を導入することですがトヨタの自働化(にんべんが付いた働)は少し違います。

普通は機械に異常が発生した場合は人間がそれを発見して機械を停止しますがトヨタの自働化の考えを取り入れた機械は機械自らが異常を検知し停止します。このように人の働きを機械に置き換えたことでより省力化を図ることができました

多能工の導入

多品目・少量生産に対応するために生み出されたのが多能工です。

それまでの生産方式では各工程に1人配置され、その工程での作業が終わるたびに製品が倉庫に戻されていました。そして次の工程の作業員がまた倉庫に行き取りに行くという工程間でのタイムロスが発生していました。

その問題を解決するために各工程の機械を一箇所に集め、1人で複数の工程を掛け持ちできるようにしました。また作業員を教育することで複数の工程を兼務できるスペシャリストとして多能工が育成されました。

このように生産機械の配置を改善し人材を育成をすることで必要な時に必要なだけ、より迅速に対応できる生産体制ができあがりました。

少子化・高齢化社会に向けた多能工戦略

現代日本が抱える課題

時代は移り変わり、日本は小子化・高齢化社会に突入しました。

統計では2030年には人工の3分の1が高齢者に区分されます。また生産活動の中核となる生産年齢人口(15歳から64歳の人口)も、2015年には7728人存在していますが、2030年においては6875万人と853万人の減少が見込まれています。

働き手は減る一方でどの業界・職種でも人員不足が叫ばれています。

現代日本が抱える問題
  1. 圧倒的な人員不足
  2. 人手不足により長時間労働が常態化
  3. 長時間労働による鬱症状や過労死の問題が噴出


私たちはこのような課題を克服し、成果を上げるため、より効率的な仕事が求められています。このような状況で最も成果を出すのが多能工です

多能工戦略

私たちがトヨタ生産方式に学ぶことは多いです。徹底的にムダを省き改善を繰り返すことで世界に名だたる一流自動車メーカーとして君臨するトヨタ自動車。そのマインドは私たち個人にも転用が可能です。それこそが多能工です。

工程間のやりとりで発生するタイムロスやコミニケーションエラーを省くことで効率的に仕事を進めることができます。人手が少なくなっている現代社会にマッチした働き方といえるでしょう。

また多能工になることで個人としての希少性が上がります。1つのスキルを持つ人は大勢いますが2つ、3つとスキルを持つ人となると数は限られます。希少性=市場価値ですので、スキルを複数掛け合わせることで市場価値が高まります。

AIやロボットに代替されない希少な存在になるために、多能工を目指してスキルを獲得していく。それこそ現代社会で存在感を示していく「多能工戦略」です。

【詳細記事】スキルの掛け合わせで希少性を獲得する方法

トヨタに学ぶ多能工の導入
  • 1980年代以前はフォード式によるベルトコンベアーでの大量生産が主流だった。
  • 石油危機が発端となり日本車の輸出が規制された。輸出ができないので日本の自動車メーカーは海外に生産拠点を移す。それにより日本の生産現場が空洞化した。
  • 小品目・大量生産から多品目・少量生産の時代へ。生産体制の抜本的な改革が必要とされる中、トヨタ自動車は「トヨタ生産方式」と「多能工」の導入により先んじて対応に成功した。
  • トヨタ生産方式の大原則は「ジャスト・イン・タイム(JIT)」と「自働化」。必要な時に必要なだけを実現した効率的な生産方式。
  • 生産機械を一箇所に集約することで工程を複数掛け持ちする体制を敷いた。この過程で多能工が生まれた。
  • 現代日本が抱える生産人員の不足問題を解決するには多能工の存在が必要不可欠。「多能工戦略」で希少性が磨かれ、市場価値が増大する。
スキルの掛け合わせで希少性を獲得する方法AIやロボットに代替されないためにも希少性を身につけなくてはなりません。この記事ではスキルの掛け合わせによる希少性の獲得方法について解説しています。...