現代日本は少子化によりどの職場も人手不足となっています。日本の人口動態をみてもこれは明らかで2011年以降、人口増減数はマイナストレンドに入っています。今後ますます加速していくことは明白です。

では働く人が少なくなるとどのようなことが起きるでしょうか?
上記のようなケースは製造業や建設業に関わらず、どのジャンルの職場でも同様に起きています。そしてこのような問題を解決することができる存在こそ多能工です。
多能工とは複数のスキルをもつスペシャリストのことで、工程を兼務することで省人化・効率化が図れるというメリットがあります。

このように工程を兼務することで価値を創出できる存在が多能工です。多能工になることで業務を効率化し、高いパフォーマンスでチームに貢献することができます。
ですが『多能工』という言葉を聞くと製造業や建設業の職人だと思っていませんか?
多能”工”というくらいだから工業系の職人をイメージしてしまいますがその考えは少し違います。多能工とは広義な意味で事務職や医療・福祉職など様々な業種で応用がきく存在です。そして多能工こそ現代社会の抱える問題にフィットした働き方であるといえます。
この記事では製造業などに代表される職人以外でも多能工になれる理由と、多能工になるにはどうすればいいのか?について解説します。

【詳細】プロフィール
- 多能工の歴史から見る製造業との関わり
- 工業系職種以外でも多能工になれる理由
- 多能工になる方法
多能工の由来

『多能工』という言葉の生まれは1980年代にトヨタ自動車が掲げた「トヨタ生産方式」に遡ります。
トヨタ生産方式(トヨタせいさんほうしき、Toyota Production System、略称TPS)
トヨタ自動車の生み出した、工場における生産活動の運用方式の一つ。多くの企業がこれらにならった方式を取り入れており、工場等の製造現場やそれに付随するスタッフ部門だけでなく、間接部門でも取り入れている企業も見られる。
(出典:Wikipedia)
トヨタ生産方式の大原則「ジャスト・イン・タイム(JIT)必要な時に必要なだけ」を実現するために、それまでのベルトコンベア式の大量生産から多品目少量生産に切り替えました。この時、多品目少量生産に対応するために登用されたのが多能工です。
このような問題に対し、多能工を育成することで以下のようになりました。
このようにトヨタの技術革新がバックボーンとなり多能工が生まれました。
【詳細記事】トヨタに学ぶ多能工の導入
この背景をもとに多能工を日本語的な意味で分解すると以下のように翻訳できます。
多:複数の
能:技能を持った
工:技術者
”工”がつくのは多能工の発祥がトヨタ自動車の技術者だったからです。
ですが果たして多能工は技術者だけなのでしょうか?
多能工は製造業だけなのか

多能工は製造業などの工業系職種だけのものなのか?答えはNOです。
多能工を英訳すると考えがスッキリすると思います。
『Multi-skilled worker』
マルチスキルワーカー(複数のスキルを持った働き手)こそ多能工の本質です。
そして現代社会では、どの業界・職種でも多能工が必要とされています。
何故かというと、小子化によりどの場所でも働き手が少なくなっているからです。
少子化により人手が足りない昨今の状況では、1人が1つの仕事をするこれまでの常識は通用しません。よりスピード感をもってプロジェクトを進めるためには工程を兼務できる多能工が必要不可欠です。

今市場価値が高まっているのは一点集中のスペシャリストよりも、広くアクセスできる多能工です。
製造業以外でも多能工になれる

本当に製造業以外で多能工になれるのか?例をあげて考察してみたいと思います。
営業×Webデザイナー
「営業×Webデザイナー」ではどうでしょうか。
大卒で商社の営業マンとして働き、営業トークスキルを獲得した人が副業でWebデザインの勉強をして次の転職先としてWebデザイン会社を選んだとします。
するとデザイナーとしての自分の強みを直接取引相手にアピールでき、営業力がアップします。また直接仕様を聞くことができるので情報伝達の齟齬がなく、ヒューマンエラーを回避することができます。

漁業×料理
もう1つ例を挙げると「漁業×料理」はどうでしょうか。
通常は漁でとってきた魚を流通業者に卸して、スーパーや料理店を経て消費者に届きますが、仲卸をすっ飛ばし自分が料理人になって直接消費者に届けるのです。
仲卸のコストが削減でき、漁獲量が少ないため流通には流していなかった珍しい魚を新鮮に低価格で提供できますので話題にもなります。

〇〇×〇〇がシナジーを生む
上記では極端な例を挙げましたが、このようなスキルの掛け合わせのバリエーションは無限大です。
自分の”得意”や”好き”を掛け合わせることでシナジーが生まれ、予想もしていなかった大きな成果をあげることも可能です。多能工=職人ではなく、誰しもが多能工になることができるのです。
多能工になるための転職

では多能工になるためにはどうしたらいいのか?
一番の近道は「転職」です。転職することで新たなスキルを獲得することができます。
「スキルを獲得するのに転職が必要なの?」
「独学や副業でスキルでは獲得できないの?」
このような疑問が上がると思いますが、私は本業でスキルを習得するほうが良いと考えます。それはスキルを習得するのに時間が掛かるからです。
教育改革実践家の藤原和博氏の著書「藤原和博の必ず食える1%の人になる方法」によると、1つのスキルを習得するのに、だいたい1万時間を要すると言われています。これは小学校入学から中学校卒業までの義務教育にかけられる時間と同じです。なので概ね5年から10年をかけてその分野のスペシャリストと認められる存在になれます。
この時間を本業をやりつつ独学や副業にあてることは可能でしょうか?不可能ではありませんが膨大な年数を費やしてしまいます。それよりも手っ取り早く本業で勉強させてもらえればいいわけです。
ただし、独学や副業が全く無意味とも思いません。未経験の職場に転職するにはある程度の経験を要する場合もあります。独学や副業である程度の実績を携えて転職活動をすることは非常に有効な手段です。(前述の例でも副業でWebデザイナーをしてWebデザイン会社に転職したケースを紹介しました)
転職してスキルを習得したら、また次のスキルを得るために転職をする。
この転職サバイバル方式をとることで、自分の市場価値をどんどん大きくしていくことができます。
【詳細記事】転職のマインド 終身雇用崩壊後の社会を生き抜く転職の重要性
Multi-skilled worker(多能工)=希少価値

多能工は製造業に代表される職人だけのものではなく、どの業界・職種にも転用可能な働き方であることを解説しました。
実際、多能工と呼べるような複数のスキルをもつ人は多くありません。圧倒的マイノリティであると言えるでしょう。もしあなたが多能工の考え方を実践するならば、それだけで周りの人たちと差別化され、特別な存在になります。希少性の獲得です。
現代社会において希少性=市場価値です。自身の市場価値を高めることで社会から必要とされる存在になります。
多能工の考え方とは
- 多能工のはじまりはトヨタ自動車が掲げた「トヨタ生産方式」から。出自が製造業のため”工”(技術者)のイメージがついた。
- 多能工の本質は【Multi-skilled worker】複数のスキルをもった働き手。
- 多能工は様々な職種で応用がきく存在。スキルの掛け合わせ〇〇×〇〇で可能性は無限大に広がる。
- 多能工になるには転職が最短ルート、転職を繰り返すことで希少性が獲得できる。
