少子化・高齢化問題により日本の生産人口は減少しています。『日本の衰退』という待ったなしの流れに対し、その対処療法として注目されているのが『多能工化』というワードです。
ですが『多能工化』とは一体何なのか。どのような現象を指すのかを理解している人は多くありません。この記事では”多能工化する社会”にフォーカスし詳しく解説します。

【詳細】プロフィール
- 多能工化とは?
- 多能工化する社会の要因とは?
- 多能工の導入による効果
- 企業・個人別の多能工戦略
現代社会の問題点

現代社会では以下のような問題があります。
- 少子高齢化
- 生産人口の減少
- 少量多品目生産
- マックジョブのDX化
- 変わらない給与水準
①小子高齢化
少子高齢化の流れは加速しています。65歳以上の人口はほぼ横ばいなのに対し64歳以下の人口は減少の一途をたどっています。すると1950年では生産労働人口約12.1人で高齢者1人を扶養していたのに対し、2015年には約2.3人で1人を扶養することになっています。
原因としては価値観の多様化による未婚率の上昇、女性の社会進出による初婚年齢の上昇等が考えられます。また医療技術の発達により寿命が延びていることも要因となっています。
②生産人口の減少
少子高齢化により生産年齢人口(働く人)の数も減少しています。内閣府の調査によると15歳から64歳の生産年齢人口において2010年では6,590万人なのが2050年では4,228万人と3分の2弱の水準まで落ち込むことが見込まれています。
これにより特に中小企業はこれまでの生産規模を維持できない可能性があります。抜本的な改革をしない限り企業は立ち行かなくなるでしょう。
③少量多品目生産
高度経済成長期は大量生産・大量消費の時代でしたが近年は製品自体の複雑化により部品点数も増大し、従来の大量生産の製造方式では対応できないケースが頻出しました。
特に中小企業などは生産数を調整しないと多くの在庫を抱えてしまい経営に打撃を与えてしまいます。部品製造を受注する中小企業においては大量生産から少量多品目生産へ時代はシフトし、多品目の部品を生産数を調整して製造することが課題となりました。
④マックジョブのDX化
DX化により同じことを繰り返すだけの仕事はAIやロボットに置き換わりつつあります。買い物のレジ打ちの仕事は数年も経てば完全に無くなるでしょう。その他にも電車や新幹線の運転士、新聞のライターなども無くなる仕事と言われています。
マックジョブ(マニュアルに沿って動く仕事)はAIやロボットに置き換わり、私たち人間は仕事を追われてしまうでしょう。
⑤変わらない給与水準
欧米などの先進国に対して日本の給与水準はほぼ横ばいです。2018年時点での平均月収(男女平均・年齢42.9歳)が30.6万円と直近の20年間で0.6%しか増加していません。
今後も水準が大きく好転する見込みがないことから、いわゆる一般的なサラリーマンとして1つの会社、1つの職種で働き続けることがリスクとなっています。
多能工化する社会

上記5つの社会問題に対しての解決策となるのが『多能工化』というワードです。多能工化とは、それまでの企業活動に多能工を導入することで業務改善を促し変革を起こすことを指します。
多能工化による改善
企業活動に多能工を導入することにより、以下のような好影響をもたらします。
【詳細記事】多能工とは?小子高齢化社会を生き抜く多能工のメソッド
省人化
少子高齢化による生産人口の減少により、特に中小企業ではこれまでの生産スピードや品質を担保できません。ですが多能工を導入することでその問題は解決することができます。
多能工は複数の工程を兼務することができるスペシャリストです。したがって1工程につき専任者1名が着くのではなく、複数の工程を1人で賄うので省人化することが可能になります。また省人化の他にも工程間の引き継ぎによるタイムロスやコミュニケーションエラーを回避することができます。

少量多品目生産に対応
従来のベルトコンベヤー式の大量生産から少量多品目生産に対応するためにも、人の手が介在する必要があります。そこで1人が複数の生産機械をオペレートできるよう教育することで生産数の調整や人員の削減が可能になります。したがってオペレーターの手腕(スキル)が重要となり複数のスキルを持ち合わせる多能工が非常に重宝されるようになります。

スキルの掛け合わせによる希少性の獲得
多能工は複数のスキルを持っています。それらのスキルを掛け合わせることで希少価値を生み出すことができます。例えばAスキルを持つ人は大勢いますがAスキルとBスキルを持つ人、さらにはAスキル、Bスキル、Cスキルと複数のスキルを持ち合わせる人の数はだんだん少なくなっていきます。

現代社会において希少性=市場価値です。複数のスキルを持ち、それらを掛け合わせることで影響力を増せば他の人たちと差別が図れますので給与交渉においても優位にたつことができます。
【詳細記事】スキルの掛け合わせで希少性を獲得する方法
現代社会における多能工化戦略

”日本の衰退”というメガトレンドに対して必要とされる存在こそが多能工です。社会全体の問題として多能工化の推進が今後の課題となってくるでしょう。そこで多能工化までの流れ『多能工戦略』について解説します。
企業の多能工化
企業が多能工を導入するにはメンター(指導者)が必要です。新しいスキルを教育するための指導者をもうけることで従業員が手探りで模索する時間を省き、導入がスムーズに行えます。また企業全体で多能工を育成するという意識も重要です。なぜなら多能工の育成には時間がかかるからです。
教育改革実践家の藤原和博氏の著書「藤原和博の必ず食える1%の人になる方法」によると、1つのスキルを習得するのに、だいたい1万時間を要すると言われています。これは小学校入学から中学校卒業までの義務教育にかけられる時間と同じです。
従って2つのスキルを習得するまでには2万時間かかります。企業は長期視点での導入を考慮しなければなりません。教育とそれにかかる時間はトレードオフであるという認識が必要です。

個人の多能工化
個人で多能工を目指す人に最も重要なのは『転職』です。新しいスキルを獲得するためには環境を変えなければなりません。そのために次々に転職してスキルを獲得していくスタイルが最短で市場価値を上げていく方法です。
その際注意しなければいけないのが業界と職種の関係です。複数のスキルを持っていても、それらに相関性がなければ何の意味もありません。獲得したスキルがシナジー(相乗効果)を生むような転職をしなければなりません。
そこで当サイトでは現在の仕事に片足を残した転職をおすすめしています。同業界の異職種もしくは異業界の同職種です。これなら前職の知識を活かしつつスキルをスケールアップしていくことができます。また給与交渉においても前職の経験があるので給与アップが狙えます。

【詳細記事】転職のマインド 終身雇用崩壊後の社会を生き抜く転職の重要性
- 現代社会が抱える問題は以下の5つ
①少子高齢化
②生産人口の減少
③少量多品目生産
④マックジョブのDX化
⑤変わらない給与水準 - 企業活動に多能工を導入する『多能工化』を果たすことで以下の改善が図れる。
【省人化】
生産人口の減少に対し1人で複数の工程を賄うことでカバーする。
【少量多品目生産に対応】
複数の生産機械を1人でオペレートすることで生産数を調整かつ多品目に対応できる。
【スキルの掛け合わせによる希少価値の獲得】
多能工となり複数のスキルを得ることで希少性が獲得できる。希少性=市場価値なので給与UPも狙える。 - 企業の多能工戦略では長期視点での教育が必要。そのためにメンター(指導者)を設置し企業全体で多能工を育成する風土をつくる必要がある。
- 個人の多能工戦略では転職によりスキルを獲得していく。片足を残した転職(同業界・異職種または異業界・同職種)をすることでシナジーを意識したキャリアアップができる。


